本年は、新型コロナウイルス感染拡大が地域社会を揺るがしております。これからの生活は、新型コロナウイルスの影響により、社会のシステムが再構築され、大きな変化が起こるような予感がしております。
広川町長就任以降の主な出来事を振り返ってみますと、平成27年7月、当時の皇太子殿下(今上天皇)が広川町「稲むらの火の館」に行啓をされ、2か月後の9月には当時の天皇・皇后陛下(上皇陛下・上皇后陛下)も行幸啓をされました。これらの慶事は、広川町にとって大変名誉なことであったと感じております。同じ年の12月には、国際連合の総会にて、稲むらの火の逸話の11月5日が「世界津波の日」に制定され、広川町と濱口梧陵翁に世界的な脚光が当たることとなりました。
このように、町の歴史的な出来事に広川町長として携われたことは非常に光栄であり、当時の様子は、とても記憶に残っております。
これらのことにより、津波防災の聖地として、広川町は世界的に注目されておりますが、本町の偉人である濱口梧陵翁が掲げた「百世の安堵」を図るような津波対策はまだまだ未完成であり、これからも積極的にハードやソフトの両面の対策を充実する必要を痛感しております。
また、現状においては、本町の人口は年々減少傾向にあり、第一に若者の流出と津波の不安により、沿岸地域を離れ、高台への住宅移転が進んでおります。今後のまちづくりには、津波の影響が及ばない高台のライフラインの充実が急務であると考え、簡易水道の統廃合と新規配水管敷設を積極的に実施しております。この事業により、若者が子育てしやすい住環境が広がると考えております。
また、人口減少問題においては、子育てしやすいまちづくりが最も大事であると考えております。そのため、子育て世代への支援策として、出産お祝い金の支給、保育料の無償化や中学生の給食費無償化に取り組んでおります。子育て環境向上のための施設整備も積極的に推し進め、学童保育施設の新設、子どもたちが静かに学習できる新設の図書館建設事業も進捗しております。さらには、老朽化が進む小中学校の立替も今後計画的に実施するなど、これらの施策により、子育てしやすい町の実現に向けて大きく前進するものと考えております。
産業面では、広川町の第一次産業は農業主体であり、特に「有田みかん」の栽培が軸となっておりますので、後継者が育つよう、「らくらく農業」と名付け、各種農業支援策を町独自に実施しております。鳥獣被害も大きな問題であり、現在も積極的な鳥獣被害対策に取り組んでおります。商業振興対策としては、町独自の起業支援策を策定し、若者の起業を押し進めておりますが、大きな成果にはまだ結び付いていないところです。
平成30年度には、「稲むらの火の館」周辺の文化財をまとめ、「百世の安堵」をテーマとして「日本遺産」に認定をされております。今後は、認定された建造物などの構成文化財の利活用に向けて、地域住民の生活との調和を図りながら、地域の活性化を図りたいと考えております。
現在は、新型コロナウイルス感染から町民を守り抜くことが喫緊の課題であります。しかしながら、10年、20年先の広川町を見据えた政策を計画・実施することも非常に重要であると考えております。昨年策定した稲むらの火のまち創生総合戦略に基づき、これからも「安全・安心のまち」「教育のまち」「活気のあるまち」を実現するため、初心に立ち戻ることを忘れずに、粉骨砕身の覚悟で様々な施策を展開していきます。